市民公園の立ち話

社会人1年目です。人生頑張っていきましょう。https://note.com/natsuki_aikawa (2020年5/6〜)

カンフーおじさん、どこへ行く

小学校3年生くらいのときの話

 

小学校の近くに中規模の公園があった。

子どもたちやゲートボーラーの憩いの場だ。

 

遊具のあるエリアと更地のフリーエリアがあった。

遊具のあるエリアにはブランコや滑り台などが設定され、芝生も生えていた。

たいてい鬼ごっこに使われていた。

 

一方の更地エリアは硬めの砂で、サッカーコートよりやや狭いくらい。

ボール遊びなんかはこのエリアだ。

ゲートボーラーもここを使う。

 

その更地エリアにたまに出現する

カンフーおじさんがいた。

 

カンフーおじさんは更地エリアを半分に分断するように線を引き、

その線上をなんらかの拳法の型をしながら往復するのである。

 

年齢不詳、ちょっともっさりしたパーマヘアで赤のジャージを着ている。

健康的なおじさんだ。

 

子どもたちはカンフーおじさんの出現にとまどいながらも

お互い邪魔にならないように共存していた。

 

子ども側からしたら得体のしれないカンフーおじさんの存在は

少し恐ろしかった。

一歩間違えれば変質者みたいなものだ。

いや、ぜんぜん変質じゃないんだけど、謎の人だから。

 

だから子どもたちもなるべくおじさんに触れないように

接点をもたないようになんとなく避けていた。

 

しかし子どもの好奇心とはすごいもので

不定期で現れるカンフーおじさんは異質な存在から興味の対象にすり替わってきていた。

 

あの人はなんなんだ、なんの拳法なんだ、強いのか、何歳なのか。

勝手な憶測が飛び交っていた。

 

そんなある日、またまたカンフーおじさんが登場した。

友達と約束していた時間に公園に到着すると

すでに到着していた友達数人がカンフーおじさんと話していた。

 

とうとう交流が始まった。

なにがあったんだろうと思いその交流の輪に近づくと

友達が言い放った。

 

 

「今からかけっこするぞ」

 

 

こうしてカンフーおじさんvs小学生軍団のかけっこ対決が始まった。

なるほど、得体のしれない人物に勝利しこちらが優位に立てば畏怖の対象ではなくなるということだ。

 

更地の端から端まで往復するかけっこ。

小学生軍団の一人でもカンフーおじさんに勝てば小学生の優位が証明される。

 

緊張の面持ちでスタートの合図を待った。

カンフーおじさんもスタート位置につく。

 

 

「よーい・・・どん!」

 

 

スタートダッシュに成功したのは小学生。

さすが、若さを生かしたすばしっこさだ。

このまま先行すれば勝てる。

 

しかしカンフーおじさんも負けていない

さっきまで視界にも捉えていなかった赤ジャージが目線にはいってきた。

大人の加速力は大したものだ。

 

ほとんど差が無くなって往復地点でターンをした。

ここでも小学生のすばしっこさが功を奏し優位に立つ。

ターンでも出遅れたカンフーおじさん。

 

2度も先行した小学生たちはまっしぐらにゴールを目指した。

 

しかし、カンフーおじさん驚異の追い上げ。

圧倒的な加速力を見せつけ小学生たちを置き去りにしたのだ。

 

結果は惨敗だった。

2度のリードをモノともせずカンフーおじさんは勝利を手にした。

 

小学生軍団は見ず知らずの得体のしれない存在に敗北を喫したのだ。

 

こうして第一次公園大戦争が終わり、公園の序列が決まって知った。

畏怖の対象だったカンフーおじさんは一転して憧れの的になったのだ。

 

 

もちろん誰一人としてカンフーなど始めなかった。

 

 

ああ、カンフーおじさん

カンフーおじさん、どこへいく

末永く健康に、カンフーおじさん