閉ざされた玄関を開きしもの、エクゾディア
一人暮らしにおいて怖いものと言えば
ゴキブリよりも冷蔵庫空っぽよりも
アポなしインターホンだったりする
250%居留守を使うことになる
大体は変な営業だったり勧誘だったり
緊急性の高くない案件だ
しかし、あまりにも暇を持て余すと
用もない業者ですら話し相手として求めてしまうものだ
ヘッドホンしながらゲームをしていた17時ごろ
インターホンが鳴った
当然ゲームが優先だなと思い無視していた
再度インターホンが鳴った
まだまだ粘る
ヘッドホンもしてるし聞こえないふりは余裕だ
ドアをノックする音がする
そこまで粘るんかい
「すいませーん」と声が聞こえる
そこまで来る人は珍しい。
さすがに可哀そうに思えてきたのでヘッドホンを外す
なおもドアをノックして「すいませーん」と言う声
そこまでの執念に敬意を表してドアを開けようじゃないか
ドアを開けるとスーツ姿の若い男性
確実になんかの営業だなと思った
話を聴くと、どうやらネット回線のプランのご紹介に参りましたそうで
今の回線契約より安くなるプランを紹介してくれるらしい
まあ悪い話ではなさそうだな。
「今キャンペーンもやってまして、月々○○円でご利用いただけます!」
なるほど
今の月額料金のほうが安いなと思った
「引っ越しとかなされるときも、再契約の必要もないので便利ですよ!」
なるほど
でも今のほうが月額料金安いなと思った
「今ご契約いただければ面倒な手続きもございませんよ」
なるほど
とはいえ今のほうが月額料金安いなと思った
「今よりお安くなりますし、面倒な手続きもないのでお客様にデメリットはないと思いますよ」
なるほど
しかしながら今のほうが月額料金安いなと思った
「こちらにご住所とお名前記入していただくだけで大丈夫です!月○○円でご利用いただけます」
なるほど
やっぱり今のほうが月額料金安いなと思った
「なにかご不明な点がございますか?」
私はおずおずと告げた
今の方が月額料金安いんです、と
営業の人と話し始めて15分程度だったろうか
ようやく伝えることが出来たその言葉は一撃必殺だった
すっかり意気消沈した男性はいそいそと帰っていった
どこで情報を仕入れたのかは知らない
どうやってこの家に決めたのかも知らない
玄関を開けさせるために
契約を得るために
粘りに粘った営業さん
正直申し訳なかった
もっと先に伝えていればお互い不毛な時間を過ごさずに済んだのに
生き生きと喋る営業さんの話術に
引き込まれてしまったのだ
ある意味営業さんにとっては名誉あることなのではないだろうか
契約する気のない顧客を話術で引き込み
耳を傾けさせるという高等テクニック
伸びるね~
今度はもっとお得な情報お願いします
そしてアポなし訪問は今度こそ出ない